Webスタートアップの未来

Paul Graham / 青木靖 訳
2007年10月

(この文章は2007年10月のFOWAでの講演を元にしている。)

今面白いことが起こっている。スタートアップはテクノロジーが安くなる時に起きるのと同じ変化を経験している。

これはテクノロジーの分野で繰り返し現れているパターンだ。最初ある種の装置がすごく高価で少量がカスタムメイドで作られている。それから誰かがそれをずっと安く作れる方法を見つけ、桁違いにたくさん作られるようになる。そしてそ のことによって、その装置は以前には考えもしなかったような使い方がされるようになる。

コンピュータがこのよく知られた例だ。私が子供の頃は、コンピュータというのは大きくて高価な機械であり、1台ずつ作られていた。今ではそれがコモディティになっ ている。非常に安いため新しい使い方ができる。いまや何にでもコンピュータを入れられるようになった。

このパータンはずっと昔から存在している。産業の歴史における転換点の多くがこの例になっている。鉄について1850年代に起き、動力について1780年代に起きた。織物の製造では13世紀に起きていて、そこで生み出された富が後のルネサンスをもたらした。農業にもこのパターンが見られる。

今ではこのパターンはスタートアップによって引き起こされているだけでなく、スタートアップに対しても起きているのだ。Webスタートアップを始めるのは非常に安価となっているため、桁違いに多くのスタートアップが生まれるだろう。そしてこのパターンが当てはまるなら、劇的な変化が起きるはずだ。

 

1. たくさんのスタートアップ

Webスタートアップの未来についての私の第一の予言はごくわかりやすいものだ。たくさんのスタートアップができるということだ。スタートアップを始めるのが高価である間は、それをするには投資家の許可を得る必要がある。今では創業者が越えなければならない壁は、ただその勇気があるかどうかということだけだ。

その壁さえも低くなりつつある。みんな他の人たちが思い切ってやってみて生き残っているのを目にしている。私たちが最近投資した一団のスタートアップの創業者の何人かは、前にも申し込もうと思ったことがあったが踏ん切りがつかなくて職に就いたということだ。自分でもやってみる気になったのは、やった友達の話を聞いてからなのだ。

スタートアップを始めるのは難しいが、9時から5時の仕事だって難しく、しかも悪い種類の難しさなのだ。スタートアップでは悩むことも多いだろうが、大企業にいるときのように自分の人生が飛び過ぎて行くようには感じないはずだ。加えて、スタートアップでは桁違いに多くの金を稼ぐことができる。

スタートアップがうまくいくという話が広まると、スタートアップの数は驚くほど増えるかもしれない。

今は会社で仕事につくのが当たり前のことだとみんな思っているが、それは歴史の上ではごく薄い上っ面にすぎない。人の寿命の2、3回分も遡れば、現在では工業国と呼ばれるところに住んでいた人の多くは農業で暮らしていたのだ。多くの人が生計を立てる方法を変えるだろうと言うと驚くかもしれないが、これまでにも変えてきたことを思えばそう驚くことでもない。

 

2. 標準化

テクノロジーが何かを劇的に安くするときには常に標準化が伴う。一度に一個ずつ作っている時には全部違ったものになりうるが、まとめて大量に作る場合にはすべて標準化して変える必要がないようにした方が効率的だ。

Y Combinatorには今でも4人しかいないので、私たちは可能な限りあらゆることを標準化するように努めている。手伝ってくれる社員を雇うこともできるが、私たちはより効率的な方法を見つけるように強いられる方を好んでいる。投資をスケールさせる方法を見出すように強いられることを望んでいるのだ。

私たちはよくスタートアップに最小限の機能のバージョン1をできるだけ早くリリースするように言っている。そうして次に何をすべきかはユーザのニーズに示させる。つまりマーケットに製品をデザインさせるのだ。私たちは自分でも同じことをしている。私たちはたくさんのスタートアップを扱うために開発しているテクニックをソフトウェアのように考えている。ときにそれは文字通りソフトウェアであることもあり、Hacker Newsや応募のレーティングシステムがそうだ。

標準化に取り組んでいる中でもっとも重要なのは投資条件だ。スタートアップがごくわずかしかなかった昔には、投資条件はすべて個別に交渉されていた。これは創業者にとっては問題となり、それは資金を募るのに長い時間がかかり、法務費用に多くのコストがかかるためだ。それで私たちがどの取引にも同じ事務書類を使っているのと同じように、私たちが投資するスタートアップが将来の投資ラウンドで使えるように汎用的なエンジェル用の事務書類を用意した。

投資家によっては相変わらず独自の契約条件を作りたがるだろう。100万ドル以上の資金を調達するシリーズAラウンドであれば、当分の間は個別の内容で契約が結ばれるだろう。しかしエンジェルラウンドについては、多くの場合標準的な契約が行われるようになると思う。何にしても創業者は込み入った条項をたくさん差し挟もうとするようなエンジェルを望まないだろう。

 

3. 買収に対する新しい姿勢

標準化され始めているのが目につくもうひとつのことに買収がある。スタートアップの数が増えるにつれ、大企業は買収のための標準的な手続きを作り始め、買収の手間は人を採用する手間より少し余計にかかるという程度になるだろう。

Googleは様々な技術領域と同様に、この方面でもリーダーの位置にいる。彼らはたくさんのスタートアップを買収している。アナウンスされているのは一部だけで、多くの人が思っている以上にたくさん行われている のだ。そしてGoogleであれば、効率的に行う方法を見出しているはずだ。

Googleが解決した問題の1つは、買収をどう考えるかということだ。多くの企業にとって、買収には依然として不適切なことという後ろめたさが伴っている。企業が買収をするのはそうする必要があるからだが、しなくて済むならと感じているのが普通だ。必要なものはすべて自前のプログラマでまえなえるべきだと思うのだ。

Googleの例はそのような考えを正してくれるだろう。Googleはこれまでのところ、他のどの公企業よりもすぐれたプログラマを集めている。その彼らが買収をすることに問題がないのであれば、他の会社には余計問題がないはずだ。Googleがどれほど買収をするにせよ、Microsoftはその10倍も多くやっていてしかるべきなのだ。

Googleが買収することに問題を感じない理由のには、買収を通じて手に入る人のクオリティの高さを知っているということもある。ラリーとサーゲイがGoogleを始めたのは検索エンジンのアイデアを売ろうとして引き取り手を見つけられなかった後だ。彼らは大企業を訪れる側にいた人間なので、会議机の向こうにどんな人間が現れるかもしれないかを分かっているのだ。

 

4. よりリスクの高い戦略を取れるようになる

リスクと報酬はいつも比例しているものだ。本当に大きなリターンを得るための方法は、ばかげているように見えることをすることだ。たとえば1998年に新しい検索エンジンを始めるとか、何十億ドルの買収提案を蹴るといったような。

これはベンチャー投資で昔から問題になっていたことだ。創業者と投資家はリスクに対して異なった態度を取る。リスクは平均としては報酬に比例することを知っている投資家はリスクの高い戦略を好む一方、創業者の方は平均でどうなるかが問題になるほど多くの事例を持たないためリスクに対してより保守的な傾向がある。

スタートアップが始めやすくなれば、この不一致も解消される。創業者は若いうちから始めることができ、より大きなリスクを取ることも理にかなったことになり、キャリアを通じてより多くのスタートアップを始めることができる。創業者がたくさんのスタートアップをやれるようになれば、世界を投資家と同じポートフォリオを最適化する視点で見られるようになる。そしてよりリスクの高い戦略が可能になることによって、作られる富の総量はより大きなものとなる。

 

5. 若く技術的な創業者

スタートアップが安価なコモディティになると、より多くの人がスタートアップをやれるようになる。マイクロプロセッサがコンピュータを安価にしたことによって、多くの人がコンピュータを持てるようになったのとちょうど同じことだ。とりわけ以前より若く、より技術的な創業者がスタートアップを始められるようになる。

スタートアップを始めるのに高いコストがかかっていた頃は、それをするために投資家を説得する必要があった。そしてそれには実際にスタートアップをやるのとは全然違ったスキルが必要とされた。投資家に完璧な判断ができたなら、2つのスキルは正確に同じものになるが、あいにくと投資家の多くは鑑定者としてひどいものだ。私は舞台裏を見ているので、資金を募るのにどれほど多くの作業が必要になるかよくわかる。そしてある業界において必要となる売り込みの量は、買い手の判断力に反比例するのだ。

さいわいに、スタートアップを始めるのが安くなると、投資家を説得する別な方法を取れるようになる。ベンチャーキャピタリストのところへビジネスプランを持って行って投資してくれるように説得する代わりに、私たちや、あるいはおじさんに何万ドルかのシードマネーを出してもらい、会社のプランの代わり実際動いている会社をもって投資家にアプローチすることができる。弁舌さわやかで自信に溢れたふりをするかわりに、ただAlexaのデータを示してやればいいのだ。

このような説得方法はハッカーに合ったものだ。彼らがテクノロジー分野に進むのは、他の分野で要求されるごまかしの多さに居づらく感じるためであることが少なくない。

 

6. スタートアップハブは存続する

スタートアップを始めることが安価になることでシリコンバレーのようなスタートアップハブが終わりを迎えると思うかもしれない。スタートアップを始めるのに必要なのがお金を借りることだけであるなら、どこででもやれるはずだ。

これはある意味正しいとも言えるし、間違っているとも言える。正しいというのは、今やスタートアップはどこででも始められるようになったという部分だ。しかしスタートアップをやるには単に始める以上のことが必要だ。成功させる必要があるのだ。そしてスタートアップが成功する可能性はスタートアップハブにおける方が高い。

私はこの問題についてはずいぶんと考えてきたが、より安くなるWebスタートアップのコストは、どちらかといえばスタートアップハブの重要性をますます大きくすると思う。スタートアップハブの価値は、他のビジネス分野の中心と同様、すごく古臭い部分、顔を突き合わせるというところにあるのだ。近い将来のどんなテクノロジーもこれを置き換えることはないだろう。ユニバーシティアベニューを歩いていたら友達に出会って週末中ずっと悩んでいたバグの直し方を教えてもらえる。あるいは、通りの向こうにある友達のスタートアップを訪ねたら、彼らの投資家と話をすることになる。

スタートアップハブにいるべきかという問題は、外部の投資を受けるべきかという問題と似ている。問題はそれを必要とするかということではなく、それにより何らかのアドバンテージが得られるかどうかということだ。なんであれアドバンテージをもたらすものは、競合がそれを持ちあなたが持たないとき、競合のアドバンテージとなる。だから誰かが「我々はシリコンバレーにいる必要はない」と言うとき、「必要」という言葉は彼らがこの問題を正しく把握していないことを示している。

そしてスタートアップハブの磁力は今まで通り強力であり続ける一方、スタートアップを始めるコストが下がり続けていることにより、それが引きつける粒は軽くなり続ける。スタートアップは今では22歳の若者2人でありうる。そのような会社は、社員が10人いて半分は子持ちという会社よりずっと容易に動くことができる。

私たちはY Combinatorで人々に引っ越させているのでそれがわかる。そしてそのことに問題はないようだ。顔を突き合わせて3か月一緒に働くことのアドバンテージは引っ越すことの不都合に勝るのだ。やった人間に聞いてみるといい。

シードステージのスタートアップは移動可能であることにより、シード投資は全国的ビジネスになる。私たちがよく受け取るメールは、地元でY Combinatorのクローンを立ち上げる手伝いをしてもらえないかというものだ。しかしそれは機能しないだろう。シード投資というのは大規模な研究施設を持つ大学と同様、地域的なものではないのだ。

シード投資は全国的どころか国際的なものではないか? 面白い質問だ。そうである兆候がある。私たちの元にはアメリカ国外から創業者が流れこんでおり、彼らはとりわけよくやる傾向がある。彼らが別な国に行くことも厭わないほど成功することへの決意を持っているためだ。

シード投資ビジネスが国際的であるということは、新しいシリコンバレーを作るのを難しくするかもしれない。スタートアップが移動可能なものであるなら、地元の最高の才能は本物のシリコンバレーに行くだろうから、地元に残る人は引っ越すだけのエネルギーを持たない人たちということになる。

ちなみにこれは別に愛国的な考えというわけではない。競合しているのは国ではなく都市なのだ。アトランタではミュンヘン同様にうまくいかない。

 

7. より良い判断が必要とされる

スタートアップの数が劇的に増えるなら、スタートアップの判断をする人にはより高い能力が求められることになる。私は特に投資家と買収者を念頭に置いている。現在私たちは年に1000のオーダーの応募を受けている。それが10,000になったらどうするか?

これは不安にさせる考えだ。しかし私たちは何らかの答えを見出すだろう。そうする必要があるのだ。たぶん何かのソフトウェアを書くことになると思う。幸い私たちにはそうする能力がある。

買収者もまた勝ち馬を選ぶ能力を磨く必要がある。現在のところ、一般に買収者は投資家よりうまくやっている。それは選択をより後に行うからで、測れるパフォーマンスデータがより多いためだ。しかし最も進んだ買収者であっても、買収する会社を見極めるプロセスはごく場当たり的に行われ、買収を完了するために本来必要ない摩擦を起こしている。

そのうち買収者は良い買収案件を見つけ契約を結ぶCAO(chief acquisition officers、最高買収責任者)を置くようになるだろうと思う。現在のところこの2つの機能は別々に行われている。有望な新しいスタートアップはしばしば開発者が見つける。力のある誰かがその会社を買収したいと思ったなら、取引は交渉のため企業開発の人間の手に委ねられる。この2つ仕事が、技術的なバックグランドを持ち達成すべきことのビジョンを持った誰かに率いられた1つのグループによって行われるなら、ずっとうまくいくだろう。将来の大企業では社内で行われるテクノロジーの開発に責任を持つエンジニアリングのVPと、外部のテクノロジーを取り込むことに責任を持つCAOの両方を持つようになるかもしれない。

大企業の人間で、もっと早くしていれば2000万ドルで買えたスタートアップを2億ドルで買ったということで処罰された人は今のところいないが、そういうことで処罰される人が出るようになるだろう。

 

8. 大学は変わる

最高のハッカーがみんな大学の後仕事に就く代わりに自分の会社を始めるようになったら、大学で起こることが変わるだろう。その変化の多くはいいものだ。後で潜在的な雇用者によって判断されるという予期によって大学での経験は捻じ曲げられていると思う。

一番わかりやすい変化は「大学の後」が意味することだ。それは大学を卒業した時という意味から大学を去った時という意味に変わるだろう。自分の会社を始めるのであれば、どうして学位なんか必要なのか? 私たちは在学中にスタートアップを始めるのはお勧めしていないが、それはスタートアップをやめることに対する社会的に許容される言い訳を与えるからだ。しかし優れた創業者には確かにそれをやり遂げられる力がある。私たちが投資した中で最も成功した会社のいくつかは大学生が始めたものだ。

私は大学の学位が本当に重要なものに思われていた時代に育ったため、このようなことを言うのには不安を感じるが、学位には別に魔術的な力はないのだ。最後の試験を通る前と後とで魔法のように何かが変わるわけではない。学位の重要性は、まったくのところ大きな組織の管理上の必要に基づいている。これは確かに その人の人生に影響を与えるが(大学を卒業せずに大学院に入ったりアメリカの就労ビザを取るのは難しい)、このような基準の重要性は下がり続けるだろう。

学生が学位を取るかどうかがあまり問題でなくなるのと同様に、どの大学に行くかということもあまり問題でなくなるだろう。スタートアップはユーザによって判断されるのであり、彼らは創業者がどこの大学に行ったかなんて気にかけない。だからスタートアップの世界では一流大学が門番としての役割を果たすことは少なくなる。アメリカにおいて金持ちの子供がいかに簡単に大学入試をごまかしているはスキャンダルになっている。しかしこの問題が最終的に解決する方法は、大学を改革することではなく、回避することかもしれない。我々テクノロジーの世界にいる人間には慣れ親しんだ方法だ。職員をやり込めるのではなく、問題が意味をなくすような仕方で再定義するのだ。

大学の最大の価値は、ブランドでもなければ授業でさえなく、そこで出会える他の学生だ。大学の後にスタートアップを始めるのが一般的になれば、みんな意識してこの価値を最大化しようとする ようになるだろう。働きたいと思う会社でのインターンシップに加わろうと努力する代わりに、共同創業者にしたい他の学生と何かを一緒にやることに注力するようになるかもしれない。

学生が授業ですることもまた変わるだろう。将来の雇用主にいい印象を与えようと成績を上げる努力をする代わりに、学生は何かを学ぼうと努力するだろう。これはすごく劇的な変化だ。

 

9. たくさんの競合

スタートアップを始めるのが簡単になれば、それはあなたにとってだけでなく、競合にとっても簡単になる。しかしそれで安価になることの利点が消えるわけではない。ゼロサムゲームをしているのではないのだ。作られるスタートアップの数と無関係に成功しうるスタートアップの数に上限があるわけではない。

実際のところ、成功しうるスタートアップの数にどんな上限があるとも思わない。スタートアップは富を作り出すことにより成功するのであり、富は人の欲求を満たすことで得られる。そして人の欲求には事実上際限がないように思える。少なくとも短期的には。

スタートアップの数の増加が意味するのは、いいアイデアの上に胡坐をかいているわけにはいかないということだ。同じアイデアを考え付く人は他にもおり、スタートアップを始めるのが簡単になれば、彼らがそれについて何かする可能性は高くなる。

 

10. より早い進歩

この点については、少なくともコンシューマー向けテクノロジーにおいてはいい側面がある。アイデアを置いておく代わりにすぐに実装に取り掛かるなら、テクノロジーはより早く進化することになる。

進化論の断続平衡説のように、ある種のイノベーションは、ひとつの会社で一度に起きる。大きな会社には恐れのあまり考えることすら難しいようなアイデアがある。MicrosoftがWebアプリケーションの発見によりどれほど難儀することになるか考えてみるといい。観客はみんな何か悪いことが起こりそうなことに気付いているのに、本人はまったく気付いていないという映画の中のキャラクタのようだ。新しい会社の生まれるペースが速くなれば、ひとつの会社で一度に起きる大きなイノベーションがより早く起きるようになる。

実際スピードの増加は二重に起こる。人々が新しいアイデアに対して行動をとり始めるのを長く待たなくなるだけでなく、それらのアイデアは大企業よりもスタートアップで開発されることがますます多くなる。これは会社ごとのテクノロジーの進化もより早くなることを意味する。

大企業はものごとを早く実現しようとするにはいい場所ではない。立ち上げたスタートアップが大企業に買収された創業者と最近話をしたのだが、彼は細かい人間で、自分たちの生産性を買収前と後とで計測していた。彼はコード行数で計っていて、これは一般的には疑わしい尺度だが、今のケースでは対象が同じプログラマのチームなので意味がある。彼は生産性が買収後13分の1になっているのに気づいた。

その買収を行った企業がとくに間抜けな会社というわけではない。彼が測定したのは、主として大きいことのコストなのだと思う。私自身同じことを経験しており、彼の数字は正しいものに思える。大きな会社にはエネルギーを吸い取ってしまうところがあるのだ。

すべてのエネルギーが有効に使われたらどうなるか想像してみるといい。世界中のハッカーたちの潜在能力は膨大なものがあり、多くの人はその存在に気付いてもいない。それが私たちのY Combinatorをやっている理由なのだ。ハッカーが自分のスタートアップを始めるのを簡単にすることで、そのエネルギーを解放するのだ。

 

一連のパイプ

現在のスタートアップを始めるプロセスは古い家の配管工事をするのに似ている。パイプは細く曲がりくねっており、継ぎ目のところで水漏れしている。将来、この混乱は徐々に1本の太いパイプで置き換えられていくだろう。水は依然として地点AからBへと流れるが、より早く、そこらじゅうの漏れから噴き出すリスクなしに流れるようになる。

これは多くのことをいい方向に変えることになる。大きくまっすぐなパイプでは、個人の能力によって測られる力がシステム全体に伝わる。パフォーマンスはいつでも究極のテストだが、現在は配管にあまりに多くのよじれがあって、多くの人はほとんどの場合そのテストから隔てられている。それによってどんな世界になるかというと、高校生はいい成績を取って一流大学に入ろうしとし、大学生はいい成績をとって雇用主にいい印象を与えなきゃいけないと思い、その会社の中では社員がほとんどの時間を政治的な 争いで無駄にしており、消費者は選択肢がないためそんな会社から買わざるを得ない。この流れが一本の太くまっすぐなパイプになったところを想像するといい。パフォーマンスで測られることの効果は高校まで波及し、現在人々が測定されている恣意的な尺度は押し流される。それがWebスタートアップ の未来だ。

 

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オリジナル: The Future of Web Startups