バイラルビデオが生まれるメカニズム (TEDTalks)

Kevin Allocca / 青木靖 訳
2011年11月

こんにちは、YouTubeトレンドマネージャのケヴィン・アロッカです。仕事としてYouTubeビデオを見ています。いいでしょう? 今日はビデオがバイラルに人気になる仕組みと、それがなぜ重要なことなのかをお話しします。みんなスターになりたいと思っています。有名人に、歌手に、コメディアン。私が子どもの頃は、それはすごく難しいことに思えました。しかし今ではWebビデオを通じて、誰だろうと、どんな作品だろうと、世界の文化の一部としてすごく有名になり得るのです。この場の誰かだって、来週の土曜までにネット上の有名人になっているかもしれません。そうは言っても、YouTubeにアップされるビデオは毎分48時間分にもなります。その中で話題になり、たくさんの人に見られ、時の顔になるのはごく一部です。どうやってそのようなことが起きるのか? 3つの要素があると思います。流行仕掛け人、作品をめぐるコミュニティ、予想外さです。見ていきましょう。

(ベア・ヴァスケズの「二重の虹」) 「わわわ、すごい、すご〜い。わはっ、すごぉ〜い。ひゃあ〜。おぉぉ、わ〜おっ!」

去年ベア・ヴァスケズがヨセミテ国立公園内の家から撮ったこのビデオを投稿し、2010年だけで2千3百万回も見られました。これは去年の夏、人気になった頃の1日あたりの視聴回数です。でも彼は別に人気ビデオを作ろうとしたわけではありません。ただ虹を見せたいと思っただけです。それが「ヨセミテの山熊」と呼ばれる男のすることだからです。(笑) 実際彼は自然のビデオをたくさん投稿しています。でもこのビデオが投稿されたのは人気になるずっと前の1月でした。ここでいったい何があったのでしょう? 答えはジミー・キメルです。ジミー・キメルがツイートして、それがこのビデオの人気に火を付けたのです。ジミー・キメルのような流行仕掛け人が新しく面白いものを紹介し、多くの人の目に触れるようにするのです。

(レベッカ・ブラックの「金曜日」) ♫金曜日だ、金曜日だ、金曜日を楽しまなくっちゃ。みんな楽しみにしている週末だ、週末だ。金曜日だ、金曜日だ、金曜日を楽しまなくっちゃ。

このビデオを抜きにしてバイラルビデオの話はできないでしょう。レベッカ・ブラックの「金曜日」は今年最も流行ったビデオの1つで、2億回近く再生されています。こちらは1日あたりの視聴回数です。「二重の虹」と同様に、どこからともなく現れたように見えます。

この日にいったい何があったのでしょう? 確かにその日は金曜でした。ついでに言うと、この飛び出した部分もみんな金曜日です。(笑) しかしこの最初の金曜日にいったい何があったんでしょう? Tosh.0が取り上げ、多くのブログが話題にしたのです。MST3Kのマイケル・J・ネルソンはこのビデオに対する冗談をツイートした最初の1人です。ここで重要なのは、1人あるいは複数の流行仕掛け人がある見解を示して、それを多くの人に伝え、バイラルプロセスを加速しているということです。

そうやってその内輪ネタを共有するコミュニティが出来上がり、みんなそれを話題にし、それで何かをやり始めるのです。今やYouTubeには「金曜日」のパロディが1万本以上あります。一週間後にはもう各曜日のパロディが出そろっていました。(笑) 20世紀の一方通行のメディアとは違い、コミュニティとの関わりというのがこの現象の中で重要な役割を果たしています。広める人もいれば、それで何かをする人もいます。

(「ニャンキャット」ビデオ)

「ニャンキャット」はループ音楽の付いたループアニメーションです。こんな感じの。今年5千万回近く見られました。「それは変だ」と思うなら知っておくべきです。これには3時間バージョンもあって4百万回も見られているということを。(笑) 猫でさえこのビデオを見ているのです。(笑) このビデオを見ている猫を見ている猫までいます。(笑)

ここで大事なのは、技術的でオタクなネット文化の中で、それがみんなのクリエイティビティを引き出していることです。リミックスがたくさんあります。レトロバージョンもあります。(笑) それから各国版も。(笑) リミックスするコミュニティが広がって、単なるバカな冗談をみんなが参加できるものへと変えたのです。今や私たちは見て楽しむだけでなく、参加もできるからです。

誰がこんなことを予想できたでしょう? 「二重の虹」やレベッカ・ブラックや「ニャンキャット」みたいなものを? こんなものを生み出すどんな筋書きが書けたでしょう? 1分ごとに2日相当のビデオがアップロードされている今日、多くの人の目を引くことができるのは本当にユニークで予想外なものだけです。ニューヨーク市の自転車への罰金に抗議している男のすごいビデオがあるぞと最初友達から聞いたとき、正直そんなに興味を持ちませんでした。

(ケイシー・ナイスタットの抗議ビデオ) 「自転車レーン外を走ったと違反チケットを切られましたが、自転車レーンにはよく障害物があって、ちゃんと走れないのです」(障害物にぶつかってこける——笑)

まったく予想外でユーモラスなケイシー・ナイスタットは、面白いことを思いついて、5百万回も見られることになりました。このアプローチは私たちが創意を持ってやる新しいことには何にでも適用できます。そしてこれらのことは1つの大きな疑問に繋がります・・・。

(ベア・ヴァスケズ) これはどんな意味があるんだろう? ああ〜。(笑)

どんな意味があるんだろう? 流行仕掛け人、作品をめぐる創意あるコミュニティ、全くの予想外さ。これらが新しい種類のメデイアと文化の特徴であり、それは誰でも手が届くもので、人気は視聴者が決めるのです。誰かが言ったように、現在世界最大のスターとも言えるジャスティン・ビーバーはYouTubeから出発したのです。アイデアにストップをかける人は誰もいません。私たち誰もがポップカルチャーを分有していると感じています。古いメディアにはそういう性質はなく、今日のメデイアにかろうじて備わっている性質ですが、これは間違いなく未来のエンターテインメントを決める要素になるでしょう。

ありがとうございました。(拍手)

[これはTED公式日本語訳です。翻訳をレビューしていただいたTakahiro Shimpo氏に感謝します。]


付録

「金曜日」のパロディ

「ニャンキャット」のリミックス

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オリジナル: Kevin Allocca: Why videos go viral