認知的魅惑と「いないいないばあ」の法則

Kathy Sierra / 青木靖 訳
2006年11月28日

脳はパズルによって刺激される。脳は理解しようとするときに刺激される。脳はほんの小さな「おやっ」と思う瞬間にも刺激される。そしてあなた方の中の一部の人(*ゴホンッ* 男 *ゴホンッ*)が思っているのとは異なり、脳はシャワーカーテンの向こうにいる裸の女性がだけ見せている方が、すべて見えているよりも刺激されるのだ。

少なくともそれが神経科学者たちがScientific American Mindの最新号の中で言っていることだ。The Neurology of Aesthetics(美の神経学)という記事で、私たちの好きな脳の研究者V・S・ラマチャンドランとダイアン・ロジャーズ=ラマチャンドランが一連の美の「法則」(彼ら自身が「法則」にカッコをつけている)と、それらの法則が我々の持つ脳の知識 によっていかに説明できるか書いている。私のお気に入りの法則——そして私たちがここでよく取り上げているもの——は、「いないいないばあ」の法則として知られている。

記事から引用しよう:

シャワーカーテンの後ろから腕だけ、あるいは肩の一部だけが見えている服を着ていない人、あるいは半透明なベールをかぶった人というのは、まったくさらけ出しているヌードよりも魅惑的なのだ。私たちの脳の考える部分が知的な問題解決を楽しむように、視覚システムというのは隠れた部分を見つけ出すのを楽しんでいるらしい。

進化は、最終的な「そうか!」という認識だけでなく、隠れたものを見つけ出そうとする行為自体を楽しいものにしている——探索をあきらめさせないためだ。

そうでもなければ、藪の陰や濃い霧の中に獲物や異性かもしれないものを一瞬見たとしても、追いかけようとはしないだろう。

何か危険なものが茂みに隠れているというとき、葉っぱの間に垣間見えたオレンジと黒の断片から完全なトラの姿を再構成できる脳の能力はとても有用だ。小さな「そうか!」の瞬間が、さらに探索して小さな 「そうか!」を得るようにと脳を促し、それが最後に完全な答えを得たときの大きな「そうか!」に至るまで続く。

さらにこうも書かれている:

優れたファッションデザイナやアーティストは、曖昧さやピークシフトやパラドックスを可能な限りイメージに詰め込んで、小さな「そうか!」をできるだけたくさん引き起こそうとする。

私たちはいつも読者/学習者/観察者の想像力のために何かを書き落としておくようにしている。彼らが埋めるべきものということだ。(これは以前に書いた「音符の間の間隔」に関連する。)

私のワークショップや講演では、ものごとが完全には解明されていない写真を見せている・・・手で隠されている顔や、(裸かもしれない)女性があなたには見えないものをじっと見つめているところとか、木の横で空中にぶら下がっている若い男の下半身とか。 (地面や男の腰から上の部分は見えていない。彼は木に吊されているのか? あるいはトランポリンしているのか? エイリアンに誘拐されているところなのか?) 脳にとっては、これらの「ウーン・・・一体どういう話なんだ?」というイメージには抵抗しがたい魅力がある。脳はそれを解明することを必要とし、そしてその体験を楽しんでいるのだ。

同じことは、非視覚的なものにももちろん当てはまる。学習においては、残らず教え、学習者の手を引き続けるほど、彼らの脳は働かなくなる。チュートリアルやレッスンや講演などを通して、彼らがニューロンを 一度も発火する必要がなかったとしたら、彼らはそのトピックについて薄く表面的で記憶に残らない概要に触れるだけだ・・・しかしどうすればいいのか? もちろん彼らに何も教えるなということではない。徐々にヒントを出すとか、心理的にじらすとか、認知的な宝探しをさせるとか、好奇心を刺激するとか、そういったことをするのだ。脳が働き出すようなことをさせるのだ。(これは私たちの本で使っている脳にやさしい戦略の一部だ)。

あなたのしようとしていることが誰かの注意を引くことであれ、注意を保たせることであれ、何かをあきらめないように動機付けることであれ、彼らがもっと深く学び、学んだことを記憶し続けられるようにすることであれ、彼らの脳が解決すべき部分を残しておくことが大切だ。彼らの脳 が刺激される何かをすることだ。

[注意: これはリファレンスのようなある種のドキュメントには当てはまらない。そこでは彼らが脳を働かせなければならないようにしたくはないだろう。リファレンスにおいては、彼らが必要とする正確な情報を提供し、彼らができるだけ速やかに入ってきて 速やかに出て行けるようにしたいのだ。記憶に残るようにすることはそこでの目的ではない。]

 

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オリジナル:  Cognitive Seduction and the "peekaboo" law

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