アーロンチェアにエアホッケー・・・ドットコムの行き過ぎか、それとも必須なツールか?

Kathy Sierra / 青木靖 訳
2006年10月2日

アーロンチェア。エアホッケー。エスプレッソマシン。MOMAに展示されていそうな現代的デザイン。バブル以前のドットコムでは美観が重要だった。楽しい職場を作ることが重要だった。(ワークステーションや巨大なモニタその他の)最高のおもちゃを持つことが重要だった。しかしドットコムが崩壊したとき、椅子やおもちゃや刺激的な仕事環境も一緒に消えてしまった。私はそれを取り戻したい。私たちにはそれが必要なのだ。陳腐な(ここで「陳腐」と言っているのは、「連中はいったい何考えてたんだ?」ということだ)ビジネスモデルでやり続けるのは結構だが、私たちのアーロンチェアは返してほしい!

問題は、デザイナたちがクリエイティブな仕事環境を持つ——必要としている——のは別に普通のこととしてみんな受け止めているのだが、プログラマとなると(あるいは「クリエイティブ」とは見なされていない職種はなんであれ)、話が変わってしまうということだ。みんなプログラマが自分の環境を気にかけないかのように振る舞っている。しかし環境が活力や創造性や生産性や幸福感に与えるインパクトの大きさを認識するためにイームズがどうとかアーロがこうとか知っている必要はないのだ。

ドットコムよりずっと前の時代に、私は何年かロサンゼルスのデザイン/クリエイティブショップで、アーティストの海の中にいるたった1人のプログラマとして働いていたことがある。そういう場所で働くようになって最初に気付いたことは、美が重要視される場所にいるのがいかに心地良いかということだ。照明、壁、道具、色合い、床、レイアウト、ドアのある個室(1人になれる時間がなければクリエイティブにはなれない!)。そういう環境でより良いコードが書けたことは請け合える。

それからゲーム会社で働くようになった。そこでは各人の作業場はおもちゃで膝まで埋もれていることが当たり前だった——ライトセーバー、実物大のカーク艦長、レゴの大作、年代物のロボットやそのほかのSFもの、そしてもちろんNerfの武器。適切なタイミングで身をかわすことを覚えてからは、そういう環境でより良いコードを書けたことは請け合ってもいい。

それから私はSunに入った。カリフォルニアのエンジニアリング部門ではなく、コロラドにある新しい巨大なキャンパスだ。自分のキュービクルを好きなように飾ることが認められていても、コーヒーがとてもおいしかったにしても、そこは私が話に聞いていたSunとは違っていた。昼休みの間に誰かの車を解体してオフィスの中で組み立てるというMITスタイルの奇妙ないたずらはなかった。それはむしろ"Office Space"に近かった。他のテクノロジー企業の多く——ほとんど——より何光年もマシではあったが、コロラドキャンパスには私の期待していたギーク/お祭り的な魅力はなかった。

しかしその後もっと悪くなった・・・私は自宅で働くようになったのだ。なくなって寂しいものが他の人たちではなく、刺激的な仕事環境であることに気付くのにはしばらく時間がかかった。私は喫茶店で仕事をしてみたり、他の自営業や在宅勤務の人たちとオフィスを共同で借りるのは利点があるかもしれないと考えたりもしたが、実際のところ私は1人で仕事する方が性に合っていた。私が惜しんでいたのは人ではなかったのだ・・・それは自分をクリエイティブでエネルギッシュに感じさせてくれる環境の中にいるということだった。私は自分の情熱にぴったりする空間が欲しい。

ドリ・スミスが1957年製のエアストリームをオフィスに借りていることを知って、すっかり変わった。私は何年もエアストリームを熱望し続け、彼女に会いに行き、そしてそれがまさに私の探していたものだとわかった。

ついに、2年の探索(と貯金)の末に、私は1966年製の(最近修復された)ビンテージの23フィートのシルバー・ストリーク・トレーラーハウスを購入した。(シルバー・ストリークはオリジナルのエアストリームの流れを継いでいる。) これが私の新しいかわいこちゃんで、戸口にいるのは犬のクローバーだ。

これは完璧だ。(私の馬の調教師夫婦と共有している)家からちょうど2フィート離して止めてあり、家のWiFiが申し分なく使える。働くのがこんなに快適に感じられるのは久しくなかったことだ。探していた間に様々な人がビンテージトレーラーを仕事場として使っているのを見つけたが、どれもみなワクワクさせられるものだった。私はまた、非常に熱心なビンテージトレーラーのコミュニティを見つけた。Tincantouristsがそうだ。

アーロンチェアはないが、本物のフォルマイカの古風な食卓で仕事をしている。

仕事環境の重要性を過小評価してはいけない。そしてアーロンチェアや美しいオフィスやおもちゃが無駄なものと決めつけないことだ。まったく反対だ。Joel Spolskyは明らかに私と同意見だ。

楽しい仕事環境の重要性について書かれた文章をいくつかリンクしておこう。

Niall Kennedy のインセンティブについて。

Joelの開発者観察ガイド

Metropolisのアーティクル

37signalsの邪魔されないことの重要性について(私は別な機会に気を散らされることの危険——それに多くの「1人の時間」が必要なこと——について書くつもりだ)。

それから退屈な環境が脳に悪影響を与えることの科学について私が以前に書いた記事。

一瞬でも自分の仕事環境の美観や刺激が重要じゃないなんて考えないこと! あなたの最も刺激的な仕事環境はどんなものだった? 在宅勤務しているなら、インスピレーションがわくようにするためにどんな工夫をしている?

私の新しいオフィスの写真を何枚か、たぶんあなたが見たいと思うよりもたくさん載せておこう。

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オリジナル:  Aerons and Air Hockey... dot com excess or essential tools?

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