プログラマの権利宣言

Jeff Atwood / 青木靖 訳
2006年8月24日

企業は開発者に給与として60-100kドル支払いながら、ひどい作業環境と汚い使い古しのハードウェアによって彼らを損なっている。信じられない話だ。そんなのはビジネス的に理屈に合わない。ところがそういうのをどこでも目にする。ソフトウェア開発者が成功するために不可欠なものを与えていな い企業がいかに多いかは驚くばかりだ。

そこでプログラマの権利宣言を採択し、成功に不可欠な基本的なことを否定する企業からプログラマの権利を守ることを提案する。

  1. すべてのプログラマは2つのモニタを持つ権利を有する
    下落する液晶ディスプレイの価格と、遍く存在するデュアル出力ビデオカードのことを考えるなら、開発者を1つのディスプレイに制限するのはばかげた話だ。ディスプレイを2つにすることによって得られる生産性の利益については、今では十分に説明されている。開発者の生産性を最大限にしたいと思うなら、それぞれの開発者が間違いなくディスプレイを2つ持つようにすることだ。
  2. すべてのプログラマは高性能なPCを持つべきである
    開発者は仕事を成し遂げるためにたくさんのソフトウェアを走らせる必要がある。開発環境、データベースエンジン、Webサーバ、バーチャルマシン、などなど。これらのソフトウェアすべてを動かすには、メモリをたくさん積んだ速いPCが必要になる。開発者のPCが速いほど、彼らのデバッグ&コンパイルサイクルは早くなる。現時点における性能帯の極端にあるものに法外な金を払うのはばかげているが、しかしいつでも必ず上限に近いものを買うようにすることだ。開発者には しこたまメモリを積んだ高速なPCを支給すること。プログレスバーを眺めて過ごす時間は無駄な時間でしかない。
  3. すべてのプログラマはマウスキーボードの選択の権利を有する
    学生の頃、私はペンキ塗りのビジネスをやっていた。雇うペンキ塗りには自分で刷毛を買わせた。これは私が最初に学んだことだった。新入りのペンキ塗りに普通の刷毛を投げ与えてもうまくいかない。 「会社の」刷毛は雑に扱われてすぐ駄目になる。しかしペンキ塗りは自分で買った刷毛であれば自分で手入れする。刷毛を買ったペンキ塗りは、自分の持つ2000円するプロ用の刷毛と、100円ショップの使い捨ての刷毛の違いを学ぶ。自分の刷毛を持つことで、揺るぎない責任とクラフトマンシップの感覚が生まれる。プログラマ も自分のマウスやキーボードに対して同じような関係を持つべきだ。それは私たちの技を行う上で必須な日々使うツールなのであり、そのようなものとして扱うべきなのだ。
  4. すべてのプログラマは快適な椅子を持つべきである
    現実に目を向けよう。我々は毎日8時間大方座って過ごしている。どうしてその8時間を快適な優れたデザインの椅子で過ごさないんだ? 開発者には8時間座っていることがどうにか耐えられる椅子ではなく、楽しくなるような椅子を与えることだ。確かに開発者を雇うのは主としてその 大きなおつむのためではあるが、開発者が持つそのほかの資産も粗末にしないことだ。
  5. すべてのプログラマは高速なインターネット接続を持つべきである
    いいプログラマは盗めるものは決して自分で書かない。そしてインターネットはかつて発明された中で最高の盗品流通経路だ。私は本が好きだが、それでも指先に高速でいい反応をしてくれるインターネット検索なくして、何らかの仕事を成し遂げるというのは想像し難く思う。
  6. すべてのプログラマは静かなる仕事環境を持つべきである
    プログラマは精神的集中を必要とする。プログラマは割り込み駆動の環境で効率的に仕事することはできない。仕事環境がプログラマのフロー状態を守れるように気を使うことだ。そうでないと、彼らはほとんどの時間を、気を散らすものの間で跳ね回って過ごすことになる。

私たちが求めているわずかの権利を認めるのは簡単なことだ。無茶な要求なんかしていない。これはソフトウェア開発者の仕事生活の質のために根本的なことなのだ。あなたの会社でこれが正しく為されていないなら、それを正すのは高くもなければ難しくもない。プログラマとしての権利を主張しよう! そして覚えておいてほしい。あなたは会社を変えることもできるし、 「会社を変える」こともできるのだ。

 

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オリジナル:  The Programmer's Bill of Rights

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