Jeff Atwood / 青木靖 訳
2007年3月12日
シリコンバレーに行くことがあれば、コンピュータ歴史博物館を覗いてみることを強くお勧めする。現存で唯一動作するPDP-1があって、それを使ってオリジナルのSpacewarゲームができるような場所が、他にあるだろうか? 私は行ってみたが、すごかった。ゾクゾクした。妻は退屈しきっていたが、それでもずっと付き合ってくれたことに感謝している。
この博物館は特設展よりも常設展示の方に本当に面白いものがある。それが建物の大部分を占めていて、かつて耳にしたことのあるあらゆるコンピュータが置かれている。見ることのできる所蔵品の中に、1999年のGoogleの 初期のサーバがある。
Googleの最初の量産サーバ
1999年 Google, Inc. アメリカ
限られた資金で、Googleの創業者ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンはこの安価な相互接続されたPCでできたシステムを最初に配備し、Googleのユーザの毎秒数千という検索リクエストを処理した。このハードウェアシステムはGoogleの検索アルゴリズム自体を反映しており、複数のコンピュータが故障しても機能しつづけ、最適化されるようにできている。
この量産サーバはGoogleの最初のデータセンターにあった約30のラックのうちの1つである。組込まれているPCの多くはもはや稼働せず、修理することも難しいが、これらのラックはGoogleの最初の大規模計算システムであり、最低限のコストでGoogleが急速に成長 することを可能にした。
Googleの最初の量産サーバは一見1999年当時の市販のパーツを突貫で組み上げたもののように見えるが、なぜなら、その通りだからだ。スタンフォードにあるGoogleの最初のサーバと同様だ。このラックが危うげに思えるなら、それが置き換えたものについて考えてみるべきだ。
当時のベンダのDellやCompaqやIBMなどから構成済みのラックマウントサーバを買う代りに、Googleはサーバインフラを自分の手で作ることを選んだのだ。たわんだマザーボードやハードディスクは、文字通り手作りのベニヤの骨格に支えられている。電源スイッチは前面にそっけなくつけられ、ネットワークケーブルが側面 から垂れ下がっている。下手に引き回された電源ケーブルは蛇行しながら後部の電源へと接続されている。
これらのGoogleの初期のサーバを見て、素人じみていて火事になりかねないと思う人もいるかもしれないが、私は違う。ここにはコモディティハードウェアが今日のインターネットを形作っていることへの先見の明が認められる。このサーバを見たとき、すごくしっくりするものがあった。私が同じ境遇にあれば、まさに同じものを作っただろう。このラックは、「安価に正しくやりたいなら自分で作ること」という、現場におけるコモディティx86マーケットDIY精神の完璧な例だ。
Googleは今日においてさえ、今や超大規模となったサーバファームにあるサーバを完全にコントロールすることに真剣に取り組んでいる。彼らは自分で高効率電源を作り、ディスク障害についてのすばらしい研究(pdf)をしている。現在見積られているところでは、Googleのサーバファームには 約450,000台のマシンがある——そして彼らは今も1999年の頃と変わらず、コモディティクラスのx86 PCをカスタムビルドしているのだ。
Googleと同じように、自分のPCは個々のパーツまですべて完全にコントロールできることを私は求めている。私はいつだって自分のPCは自分で組み立ててきた。自分でPCを組み立てるというのは誰にでも勧められることではないが、ちょっとした力仕事を厭わないなら、DIYアプローチによってよりクオリティが高くパフォーマンスに優れたPCを得ることができる——そしてしばしばかなりのお金の節約にもなる。
以下の表はスコット・ハンセルマンのUltimate Developer Rig Throwdownのために調べたことをまとめたものだ。
D.I.Y. "ビッグ・バン" |
D.I.Y. "リトル・バン" |
Mac Pro | Dell XPS 710 | Dell Dimension | |
CPU | Intel Core 2 Quad 2.4 GHz |
Intel Core 2 Duo 2.4 GHz |
2 x Intel Core 2 Duo 2.66 GHz |
Intel Core 2 Duo 2.4 GHz |
Intel Core 2 Duo 2.4 GHz |
メモリ | 4 GB, DDR 800 | 2 GB, DDR 800 | 1 GB, DDR ECC 667 | 2 GB, DDR 667 | 2 GB, DDR 667 |
マザーボード | P965 premium | P965 budget | Intel 5000x | 不明 | 不明 |
HDD | 2 x 150 GB 10k RPM (RAID 0) 2 x 750 GB (RAID 1) |
500 GB | 250 GB | 500 GB | 500 GB |
Video | 2 x 512 MB X1950 Pro | 256 MB X1950 Pro | 256 MB 7300 GT | 256 MB 7900 GS | 256 MB 7900 GS |
ケース |
Antec P180![]() |
Antec P180 | Apple![]() |
XPS![]() |
Dimension![]() |
その他 | 特製電源ユニット 特製ヒートシンク |
特製電源ユニット 特製ヒートシンク |
OS X バンドルソフトウェア |
Windows Vista | Windows Vista |
価格 | $3,500 | $1,400 | $2,499 | $2,039 | $1,400 |
OSのコストを度外視するなら、DIY "リトル・バン"システムは同じ値段の市販製品より大きなインパクトがある。そして"ビッグ・バン"の方はダントツだ。予算さえ許すなら。
ローエンドのDellシステムは一見構成がよく似ているが、詳しく見ればそうでないことがわかる。
Mac Proは美しくデザインされマシンだが、これもまたいくつか変なところがある。
自分のデスクトップPCを自分で組み立てる時間や気力がないなら、DellやMac Proを買うというのはまったく妥当な選択肢だ。値段は手頃だし、構成も柔軟だ。注意深く選ぶなら、既成のものを買う のにまずいところは何もない。しかしDIY"リトル・バン"システムのセットアップを完了した暁には、どの既製品と比べても、より高速で、より静かで、より効率的なものがより安い値段で手にできる。それはDIYシステムは自分に合わせて作れるからこそできることだ。自分が使いたいパーツを、望むように構成することができるのだ。
一般的なユーザには既成のPCは十分用を為してくれるかもしれない。しかし既製品はGoogleには有効でなかった。そして既製品は私には有効でないのだ。
我々は一般的なユーザではない。プログラマだ。x86コモディティPCは我々の技術にとって必須かつ究極のツールなのだ。それは30年に及ぶコンピュータの進化のたどり着いた姿だ。そしてそれは今日も進化し続けており、我々がプログラムを作る仕方に大きな影響を与えている。自分のPCをコンセントにさせば使える家電製品みたいに扱うなら、ソフトウェアとハードウェアの間にある共生関係について重要なことを学ぶ機会を失うことになる。コモディティPCを本当に理解する最良の方法は、自分のPCを組み立て ることに嬉々として取り組むことなのだ。手を汚し、コンピュータハードウェアの経済を直接体験するのだ——それは最初のコードがメモリに格納された時以来、ソフトウェア産業を形作ってきたのと同じ経済だ。
それにやってみたら楽しくなるかもしれないよ。
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