最初の一歩は始めること

Jason Zimdars / 青木靖 訳
2010年8月31日

「Webデザインを始めたい場合、どうすればいいんでしょう?」とか、「Webアプリを作り始めるには、どんなスキルが必要ですか?」といった質問をする人がたくさんいる。おすすめの本を山ほど挙げたり、「となりのやつより115%上をいく55の技」みたいな記事を何十本かリストアップするのは簡単だが、本当のところを言うと、始めるために何かを学ぶ必要はない。一番重要なことが何かというと、ただ始めることなのだ。

何かを作り始めること。Webデザインを学びたいならWebサイトを作ればいい。起業家になってWebベースの製品を売るビジネスを始めたいなら何かアプリを作ればいい。まだスキルがないかもしれないけど、どうしてそんなこと気にするの? どんなスキルが必要になるかもわからないというのに。

すでに知っていることを使って始める

Webで何か作りたいんだったら、HTMLとCSSとRubyとPHPとSQLを勉強しなきゃいけないと心配することはない。最終的な製品のためには必要になるかもしれないけど、始めるためにはどれも必要にはならない。アプリケーションのアイデアをKeynoteやPowerPointを使ってモックアップにしてみたら? 四角形でフォームフィールドを描き、コピーを入れて、ページとページをリンクすればいい。手元にあるよく知っているソフトを使って、十分ちゃんとしたインタラクティブなプロトが作れる。コンピュータはあんまり詳しくないって? なら紙と鉛筆か、Post-itメモを使えばいい。画面の絵を描いて壁にテープで留め、流れを考えたらいい。

君はたぶん必要なスキルが何かさえ知らないだろう。だったらそれについて心配なんかしないことだ。すでに知っていることを使って始めればいい。

簡単なスケッチやプレゼンテーションスライドでも、すごく多くのことができる。自分のアイデアに形を与え、それが何か本当に特別なものになるだろうか評価できるようになる。次のステップに進むのはその時だ。プロトタイプをブラウザに載せられるようにHTMLを少し勉強することになるかもしれない。要は、今持っているスキルやツールで行けるところまで行くということだ。

自分を疑わない

私たちが何かを始めない理由は、多くの場合、スキルや道具や設備のあるなしとは関係がない。本当に障害になるのは自己批判と言い訳だ。素晴らしい本『脳の右側で描け』で、ベティ・エドワーズは、私たちはみんな子供の頃には描いていたのに、思春期になると、その能力を伸ばすのをやめてしまうと言っている。

“多くの大人は思春期のはじめに、描くスキルという意味での芸術的成長が突然の終わりを迎えている。子供だった彼らはそこで芸術上の危機に直面するのだ。複雑化する周りの世界に対する認識と、その時点における芸術的スキルとの間に摩擦が起きるのだ。”

この年代の子供たちは自己批判的になると同時に、リアルに描くことに興味を抱くようになる。そしてこう描けるはずだと思うように描くことに失敗すると、多くの人は描くことをまったくやめてしまう。

この感覚は大人になっても続く。私たちはWebサイトをデザインしたりアプリケーションを作りたいと思っても、自分の持つ道具立てが必要と思うスキルセットに及ばないとなると、始めようとさえしない。インターネットによって数限りない見事な作品や才能ある個人や優れた制作に触れられることも助けにはならない。最高の人々と比べるとき自分は不適格だと感じるものだが、その彼らにしても、生まれながらにしてスキルを持っていたわけではないし、始めなかったとしたらそのスキルを身につけることもなかっただろう。

人生にリハーサルはない

成功した人々というのは、自分に対する不安に関わらず進み続ける方法をどうにか見つけている。フィンセント・ファン・ゴッホが画家であったのは、生涯の最後の10年に過ぎない。私たちはみんな彼をその見事な作品によって知っているが、彼がはじめから巨匠であったわけではない。『脳の右側で描け』で例として挙げられている、下の2枚の絵を比べてみてほしい。初期の素描と、その2年後に描かれた作品だ。

フィンセント・ファン・ゴッホの『大工』(1880年)と『嘆く女』(1882年)

ゴッホは天才少年ではなかった(彼が絵を始めたのは27歳の時だ)。彼は絵を努力して学んだのだ。彼が自分への疑いに耳を傾け、ポール・ゴーギャンには遠く及ばないと失望していたとしたら、試みさえもしなかっただろう。

私たちがやっているべきことの妨げになるものはたくさんあるが、自分は優れてはいない、スキルや知識や経験がないといって夢を追わないとしたら、それは惜しいことだ。実のところ、不安のあるプロジェクトこそ追い求めるべきだ。それは最大の挑戦と最大の報いを与えてくれるのだから。もう何百回となくやっていてもはや学ぶべきことのないことを、どうしてやろうと思うのか? プロジェクトを完成させるために知る必要のあることについて心配することはない。始めるために必要なものはすべて持っているのだから。

 

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オリジナル:  The first step is to start