形が変化する未来の携帯 (TEDTalks)

Fabian Hemmert / 青木靖 訳
2010年2月

私は博士課程の学生です。私が追いかけているテーマは、「どうすればデジタルコンテンツをつかめるようにできるか?」ということです。一方にはデジタルの世界があって、そこでは多くのことが起きています。しかしそれには実体がありません。仮想的です。他方で私たちは物理的な世界に住んでいて、そこは豊かで、美味しさや感触や香りに満ちています。問題は、どうやってデジタルなものを物理的な世界に持ってこれるかです。それが私の課題です。タッチするiPhoneや体を使うWiiを見ていると、物理的なものへと進む傾向が見られます。では次にやってくるのは何でしょう?

お見せしたいアイデアが3つあります。1つ目は重みです。私たちは手に持っている物のどこに重みがあるかに敏感です。それを携帯に応用できないでしょうか? 重心移動携帯をごらんに入れましょう。これは携帯の形をした箱で、中には動かせる鉄の重りが入っています。どこに重みがあるか感じられます。重心を変えられるのです。そうすると、デジタルコンテンツに重みを持たせられるようになります。画面上のコンテンツを動かしたときに、装置の重みからそれがどこにあるかわかります。もう1つの応用はナビゲーションです。街で道案内を使っているとき、重みによって知らせることができます。「右に曲がって。ずっとまっすぐ。ここで左に」。これの良いところは、装置をずっと見ている必要がなく、景色を自由に眺められることです。

重みが1つ目でした。2つ目は形です。私たちは手に持っている物の形にも敏感です。ダウンロードした電子書籍が20ページだったら薄く感じ、500ページだったら 「ハリーポッター」のような厚みを感じたいのです。形の変化する携帯をご覧いただきましょう。再び携帯型の箱です。今度のは形が変わります。形自体で遊ぶことができます。ポケットに入れているときには薄くあってほしいですが、手に持った時には上がせり出して、下の方へ薄くなる形になります。横向きにしたら自動的に形も調整されます。ナイトテーブルに立てて映画を見たり、アラーム時計にする場合にも便利です。すごくシンプルです。別な使い方は、携帯で見ているものが携帯画面より大きい場合です。このように画面より大きいアプリで、携帯の形によって、「画面の外にもっとコンテンツがあるよ、見えてないけど」と伝えられます。携帯の厚みによってそれを感じ取ることができます。

形が2つ目でした。3つ目は違ったレベルのものです。人間というのは社会的であり、共感的であり、それは素晴らしいことです。それを使って携帯をもっと直観的にできないでしょうか? ポケットに入れているのがハムスターなら、それを感じることができ、取り出さなくとも元気だとわかります。生きた携帯をご覧に入れましょう。再び携帯型の箱です。でもこれには呼吸と心拍があって、とても有機的に感じられます。(笑) 今すごくリラックスしているとわかります。ああ、電話だ。新しい彼女からかも。すごくドキドキします。どうやって気を落ち着かせましょう? 耳の裏を撫でてあげると落ち着きます。とても直観的で、それは好ましいことです。

デジタル情報を「つかめる」ようにする3つの方法をご覧いただきました。物理的にするというのは良い方法だと思います。これの背後にある考えは、未来には人間がもっと技術的になるのではなく、技術の方がもっと人間的になるということです。

(拍手)

 

[これはTED公式日本語訳です。翻訳をレビューしていただいたYuki Okada氏に感謝します。]

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オリジナル:  Fabian Hemmert: The shape-shifting future of the mobile phone