DARwIn
次のロボットは現在の我々のスターです。このDARwInには実際ファンクラブがあります。「ダイナミック人型知的ロボット」(Dynamic
Anthropomorphic Robot With
Intelligence)です。私たちはヒューマノイド、つまり人型の歩くロボットにとても関心があります。それで小型のものを作ってみることにしました。2004年当時にはとても革新的なことで、実現可能性を探る研究でした。どんな種類のモーターを使うべきか?
そもそも可能なのか? どのような制御が必要になるか?
これにはまだセンサーがついていません。開ループ制御です。皆さんはきっとご存じですね。センサーなしでバランスを崩したら… (笑)
この成功をベースとして、次の年には運動学に基づいてちゃんとした機械設計を行い、2005年にDARwIn I
が誕生しました。立ち上がり、歩きます。しかしまだコードが繋がっています。外部の電源と外部との通信にまだ頼っていました。
2006年に本当に面白いものになりました。知性を持たせたのです。必要な計算能力を与えました。1.5GHzのペンティアム、2つのFireWireカメラ、8つのジャイロ、加速度計、足には4つのトルクセンサー、リチウム電池。DARwIn
II
は完全に自律的です。遠隔操作はしていません。ケーブルもついていません。周りを見回し、ボールを探し、周りを見回し、ボールを探し、自律的な人工知能によって、サッカーをプレーします。見てみましょう。この時はまさに私たちの最初の試行でした。ゴーーール!!
RoboCup
RoboCupという大会があります。ご存じの方がどれくらいいるかわかりませんが、国際的な自律ロボットによるサッカー競技会です。RoboCupの目標は、2050年までに等身大の自律ヒューマノイド型ロボットで人間のワールドカップ優勝チームと試合をして勝つことです。それが真の目標です。野心的な目標ですが、私たちはやれると信じています。
2008年は中国で行われました。この競技会にアメリカから参加したのは、私たちが最初でした。今年2009年はオーストラリアで行われました。3対3で全く自律的に試合を行います。そら入った!
ロボット同士でチームプレーを競うのです。とても見応えのある、エキサイティングな競技イベントの形を取った研究イベントです。これは美しいルイヴィトンカップのトロフィーです。最高のヒューマノイドに与えられる賞です。来年には是非、このトロフィーを初めてアメリカに持ち帰るチームになりたいと思っています。(拍手)
DARwIn IV
DARwInは他にもたくさんの才能があります。去年はホリデーコンサートでロアノーク交響楽団の指揮をしました。これは次世代のロボットDARwIn IV
です。より賢く、より速く、より強くなっています。その能力を披露しようとしています。「俺はマッチョだ、俺は強いんだ」。ジャッキー・チェンみたいなカンフーアクションだってできます。(笑)
そして歩き去ります。これがDARwIn IV です。ロビーでご覧いただけます。これをアメリカ初の走れるロボットにしたいと思っていますので、ご期待ください。
創造の秘密
私たちのエキサイティングなロボットの動作をご覧頂きました。では私たちの成功の秘密は何でしょう? どうやって考え出しているのか?
どうやってアイデアを発展させているのか?
私たちは都市域を完全自動走行する自動車を作り、DARPAアーバンチャレンジで50万ドルの賞金を獲得しました。私たちはまた、視覚障害者が運転できる世界最初の車も作りました。これは視覚障害ドライバーチャレンジと呼んでいます。まだまだお話ししたいエキサイティングなロボティクスプロジェクトがたくさんあります。これは私たちが2007年秋にロボティクス関係のコンペで受賞したものです。
インスピレーション
秘密は5つあります。まずどこからインスピレーションを得るか、イマジネーションの閃きをどうやって得ているかです。これは本当のことで、私自身の話です。夜眠るとき、明け方の3時か4時頃ですが、横になって目を閉じると、線や円やいろいろな形が浮遊して、組み合わさり、ある種のメカを形作ります。そうすると私は、「ああ、これはいいな」と思い、ベッドの脇に置いてあるノートと特別なLEDライト付きペンを取り出します。明かりを付けて妻を起こしたくはないので。
思いついたことをすべて書き、絵を描いて、それから眠りにつきます。毎朝一番にやるのは、一杯のコーヒーよりも、歯磨きよりも先にするのは、そのノートを開いて見ることです。多くの場合何も書かれていません。時々何か書かれていますが、大抵、自分でも何が書いてあるのかわかりません。朝の4時に寝ぼけて書いたのですから無理もありません。解読する必要があります。でも時々そこにすごいアイデアが書かれていることがあります。「見つけた!」という瞬間です。すぐに書斎に走り、コンピュータの前に座ってアイデアを打ち込み、スケッチを描き、そうやってアイデアのデータベースに保存します。そして公募があると、要件に合う可能性のあるアイデアをその中から探します。ピッタリのものがあれば、研究企画書を書いて、研究資金を獲得します。私たちの研究プログラムはそうやって始まります。
ブレインストーミング
しかしイマジネーションの閃きだけでは十分ではありのません。そのようなアイデアをどうやって発展させるのか?
私たちのラボRoMeLaでは素晴らしいブレインストーミングセッションをやっています。みんな集まって、課題や、社会的問題について議論し、話し合います。始める前にルールを確認します。そのルールとは、「誰のアイデアも批判しない、どんな意見も批判しないこと」です。これはとても重要で、学生は、自分の意見や考えを他の人がどう思うか不安になったり、怖れたりするものだからです。
このルールを徹底するだけで、学生たちは驚くほど自由にアイデアを出せるようになります。彼らはすごいクールでクレージーな素晴らしいアイデアを持っています。部屋全体に創造的なエネルギーが充満しているかのようです。そうやってアイデアを発展させるのです。
ツール
もう時間がありませんが、もう1つお話ししておきたいのは。アイデアを閃めかせ展開させるだけでは十分でないということです。TEDで素晴らしい講演がありました。ケン・ロビンソン卿です。彼は教育や学校がいかにクリエイティビティを殺しているかという話をしました。これには実際2つの面があります。巧妙なアイデアとクリエイティビティと工学的直感だけでは、できることが限られています。ただの工作以上のことをやろうと思ったら、趣味のロボットを越え、しっかりした研究に基づいて本当に大きなロボティクスの課題に取り組もうと思ったら、他にも必要になるものがあります。そこが学校の生きてくる部分です。
悪者たちと戦うバットマンは、ユーティリティーベルトや引っ掛けフックやさまざまな小道具を持っています。私たちロボティクス研究者、エンジニア、サイエンティストにとって、そのツールに当たるのが大学の授業や教程なのです。数学、微分方程式、線形代数、科学、物理、最近では化学や生物学まで活用しています。これらは私たちが必要とするツールなのです。ツールがたくさんあるほど、バットマンは悪者相手に効果的に戦うことができます。私たちには大きな問題に取り組むための足がかりが増えます。教育というのはとても重要なのです。
熱心に働き、楽しむこと
またそれだけでなく、本当に熱心に働く必要があります。私は学生にいつも言っています。「賢く働き、そして熱心に働くこと」。後ろに出ている写真は午前3時のラボの様子です。私たちのラボに午前3時とか4時に来ていただけば、きっと学生たちがまだ働いているでしょう。私がしろと言ったからではありません。みんなすごく楽しいからやっているんです。これが最後の点に繋がります。「楽しみを忘れないこと」。これこそ私たちの成功の一番の秘密です。みんな本当に楽しんでやっています。最高の生産性は楽しんでいるときにこそ得られるのです。それが私たちのしていることです。以上です。どうもありがとうございました。(拍手)。
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