自分の物語を書いて歴史を変えよう (TED-Ed)

Brad Meltzer / 青木靖 訳
2011年11月19日

歴史の最大の秘密が何か分かりますか? 歴史は変えられるということです。変えられないとみんな言うのは分かっていますが、変えられるんです。今日は歴史というのは後ろ向きだけのものではなく、前向きでもあることを話したいと思います。まだ起きていない素晴らしいことがたくさんあって、それは書かれるのを待っている歴史なんです。ではどうすれば変えられるのか? 子どもを寝かしつけるときいつも私が話している3つのことをお教えしましょう。本当のことです。このアイデアは元々友人が父親から教わったことでした。毎晩子どもを寝かしつけるとき、私は3つのことを言っています。大きな夢を持ち、熱心に働き、謙虚でいること。順に見ていきましょう。

最初に大きな夢を持つこと。一番大きな最高の夢を持っているのは誰でしょう? 君たち若者です。マーティン・ルーサー・キングが有名なバス・ボイコット運動のリーダーになったとき、何歳だったでしょう? 26です。女性飛行士のアメリア・イアハートが最初の世界記録を作ったとき、何歳だったでしょう? 25です。スティーブ・ジョブズがAppleを創業した時、何歳だったでしょう? 21です。ジェリー・シーゲルとジョー・シュースターが最初にして最大のスーパーヒーローのアイデアを思いついてスーパーマンと名付けたとき、何歳だったでしょう? 17歳なんです。2人の17歳の少年がスーパーマンを生み出したんです。彼らは写真で見ての通り、見た目は冴えません。人気者ではありませんでした。お金もありませんでした。でも2人は親友で、1つの夢を共有していました。そして自らの想像力だけでスーパーマンを世界にもたらしたのです。スーパーマンの創造なんて一生に一度の大きな夢でしょう。

そこでアレクサンドラ・スコットのことを話したいと思います。みんなアレックスと呼んでいます。アレックスは1歳になる前にガンと診断されました。彼女の人生はずっと、病気と化学療法と手術ばかりでした。4歳の時、彼女は庭先でレモネードスタンドをやりたいと両親に言いました。欲しいものがあったからではありません。そのお金を、他のガンの子どもたちのために役立てたいと思ったのです。アレックスのレモネードスタンドは1日で2千ドル売り上げました。でも私が好きなのはその先です。すぐにアレックスの名を冠したレモネードスタンドが次々とできはじめたんです。収益は20万ドルになりました。するとアレックスは新しい目標を掲げました。百万ドル集めようと。2004年6月12日、アメリカの州という州に何百というレモネードスタンドが開きました。普通の人たちが、ガンの子どもを助けるためにレモネードを作って売ったんです。その2ヶ月後にアレックスは両親に手を握られながら息を引き取りました。8歳でした。でも死ぬ前に彼女は来年の目標を5百万ドルに決めていました。今日彼女の夢は4千5百万ドル以上を集め、さらに伸び続けています。1つのアイデア、1人の少女、1つの大きな夢。彼女が死ぬ前に言った言葉は何だったでしょう?「私たちきっとできるわ。みんなが手伝ってくれたらきっとできる。できるって分かるの」

大きな夢を持って。年なんか関係ありません。他の人にできないなんて言わせないで。みんな歴史を変えることができるんです。これは2番目のものに繋がります。熱心に働くこと。シンプルで誰でも分かることです。熱心に働く。私はこれをいつも数ヶ月前に亡くなった父の姿に見ていました。私がブルックリンで過ごした子どもの頃、父は熱心に働いていました。貧乏な生活の中で、父は土曜も日曜も働いていました。仕事がどんなに大変なものか週末にいつも目にしていました。

一番難しいのが何かというと、失敗に直面しても立ち直るということです。私が本を書き始めた頃、最初の本に24通の拒絶通知を受け取りました。出版社20社から24通の通知を受け取ったんです。はっきり分からせようと2度書いてよこしたところがあったということです。そして9冊目となる「息子に贈るヒーロー列伝」という本を書いていて、自分は失敗を乗り越え熱心に働く物語が好きなんだと気付きました。友人が教えてくれたライト兄弟の話なんですが、ライト兄弟は飛行機を飛ばしに行く時、何度か墜落しても大丈夫なように、部品をいつも余分に持って行きました。飛ばせばいつも失敗することを知っていたのです。墜落しては組み立て直すのを繰り返したからこそ、やがて飛び立つことができたのです。

私はこの話が好きです。息子に聞かせたくて、娘に聞かせたくて、みんなに知って欲しかったんです。大きな夢を持って熱心に働き、失敗と戦うなら、歴史を変え、地上で誰もしたことのないことだってできるんだと。

そこから3つ目のものに繋がります。謙虚でいることです。もしその人が世界最初の飛行機やスーパーマンや何百万ドルのレモネードチェーンを作ったなら、謙虚になることはなく、顔に「私って最高」と入れ墨すればいい。そうでしょう?でも注意して。みんなクソ野郎は嫌いです。世の中大口たたきが多すぎます。謙虚にいきましょう。トーマス・ジェファーソンは独立宣言を書きましたが、生前にはそのことを公にしていなかったのを知っていますか? 一般の人は彼の死亡記事を読んで初めてそのことを知ったんです。奥ゆかしいですよね。

だから大きな夢と、熱心に働くことと、謙虚さが大事です。「えっ、それだけ?」と思ってますか? 「ストーリーはいいけど、どうすれば歴史は変えられるの?」その答えは、歴史というのは沢山のストーリーでできているということです。相反するストーリー、大きなストーリー、小さなストーリー、自分たちのストーリー。どうすれば歴史を変えられるのか? 必要なのは、自分のストーリーを書くということです。本当にそうなんです。歴史は事実や年号を暗記するものだとみんな思ってるけど、それは歴史なんかじゃありません。歴史は選択のプロセスです。私たち1人ひとりが毎日選び取るものなんです。唯一の問題は使命を感じるかどうかです。

これは私が今日一番伝えたいことに繋がります。皆さんは歴史を変えるだろうということです。ある人は大きく変え、何百万という人に影響を与えるでしょう。別の人はもっと個人的なやり方で、家族や困っている人を助けるでしょう。でも言っておきたいのは、一方が他方より重要ということはないということです。助けるのが大勢であれ1人であれ、皆さんが行動を起こす時、歴史が変わるのです。

自分の物語を書き始めようというとき、みんな怖れを感じるものです。でも知っておいて欲しいのは、誰も生まれながらのヒーローではなかったことです。私が今日お話しした人たちは、26歳の牧師であれ、2人の17歳のオタクであれ、ガンの少女であれ、みんな自分を疑った瞬間があったのです。私や皆さんと同じように。学校や友達のことで思い悩み、受け入れられるか心配した時があったのです。私や皆さんと同じように。孤独や失敗に苛まれ、成功できっこないと思った時があったのです。私や皆さんと同じように。肝心なのは、世界を変えるために何百万ドルのレモネードスタンドで始める必要はないことです。ただ1人の人を助け、1人の人に親切にする。それが答えなんです。それが私のお話しした物語のすべてに共通することだと私は信じています。普通の人が世界を変えられると私は信じています。どれだけお金を持っているか、どこの学校を出たか、そんなのはどうでもいいことです。普通の人の持つ影響力が世界を変えるんです。私は父を、25歳のアメリアという名の命知らずを、レモネードを売る小さな女の子を猛烈に信じています。それこそ最初にお話ししたヒーローのスーパーマンを私が信じている理由です。あの物語で一番重要な部分はスーパーマンではありません。重要なのはクラーク・ケントです。なぜだと思います? 私たちはみんなクラーク・ケントだからです。退屈な普通の人間でありながら、自分の力を越えた大きなことをしたいと願うのがどんなものか、みんな知っています。でもどう思います? 私たちはみんな自分の力を越えたすごいことができるんです。私は最初の本への拒絶を24通受け取りました。24人から諦めろと言われたんです。それにめげることなく思ったんです。「自分は間違ってない。間違ってるのは向こうだ。見てろ」。思い返してみて気付くのは、あの拒絶の手紙の1通1通が、もっと熱心に働き、もっと大きな夢を持ち、謙虚になるようにと教えていながらも、同時に私の思いを強くさせたということです。だからどんな大きな夢を見るにせよ、何に熱心に取り組むにせよ、若すぎるとか、見込みがないとか誰にも言わせないことです。すべての人生が歴史を作るのです。すべての人生が物語なんです。どうもありがとう。

 

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オリジナル:  Write your story, change history - Brad Meltzer