Webに作る美術館の美術館 (TEDTalks)

Amit Sood / 青木靖 訳
2011年3月

私はアミットと言います。1年半前、Googleで別な仕事をしていたときに、美術館とアートに関するアイデアを上司に提案しました。本人があそこにいますが、やっても良いと言ってくれました。1年半やってきて、9カ国・17の美術館との交渉には面白い話もいろいろあるんですが、今日はデモだけお見せすることにします。これをやることにした理由はいろいろありますが、私個人の理由は、このスライドにあるような、アクセスの問題です。(「休館日 日曜、月曜、火曜、水曜、木曜」)。私はインドで育ち、素晴らしい教育を受けられ、不満はありませんが、美術館や美術作品に接する機会はほとんどありませんでした。だから世界を旅行して美術館に行くようになって、多くのことを学べました。そしてGoogleで働きながら、美術館をもっと身近にという願いを技術の力で実現すべく、優れた人たちを集めてチームを作り、これに取り組み始めたのです。

これからデモをご覧に入れ、サイトの開始以来私たちがやってきた面白いことをいくつかご紹介します。使い方はすごく簡単です。GoogleArtProject.comに行くと、ここにある数々の美術館を見て回ることができます。ウフィツィ、MoMA、エルミタージュ、アムステルダム国立美術館、ゴッホ美術館。私の好きなニューヨークのメトロポリタン美術館を選ぶことにしましょう。入り口が2つあります。クリックすると、パッ、そこは美術館の中です。どこにいるかは関係ありません。ボンベイたろうとメキシコだろうと、どこからでも楽しむことができます。いろんな部屋を覗いてみたいですか? フロアマップを開いてクリックするだけで、ひとっ飛び。回廊の向こう端まで行きたいですか? 進むだけです。お好きなように探索してください。(拍手) 面白くなるのはまだこれからですよ。(笑)

私の好きな絵の前に来ました。ピーテル・ブリューゲルの『穀物の収穫』です。プラスマークがありますが、美術館が画像を提供している場合には、クリックして拡大できます。絵に関する様々なメタデータがあります。美術に興味のある人なら詳しく見たいと思うでしょうが、今は閉じておきます。画像の撮影にはギガピクセル技術を使っています。この画像の場合だと10ギガピクセルもあります。「10ギガピクセルだと何ができるの?」とみんなに聞かれます。10ギガピクセルがどういうものかお見せしましょう。楽々とズームできます。ここでは楽しそうななことになっています。この人いいですね。表情がなんとも言えません。もっと詳しく見たくなります。それでいろいろ見始めたら。ここで何かやっているのに気づきました。「おや。何か面白そうだな」と思い、近づいてみると、子どもたちが何かにものを投げつけているようです。調べようと思って美術館の知り合いに聞いてみたら、これはスクウェールと呼ばれる遊びで、告解火曜日に棒をガチョウに投げつけるのだそうです。人気のある遊びだったようです。なんでそんなことをするのかわかりませんが、少し勉強になりました。めいっぱい拡大すると、表面の細かいヒビまで見えます。全体像がわかるようにズームアウトしてみましょう。ここにいたわけですが・・・これが絵の全体です。(拍手) 面白いのはこの先です。(笑)

今度はMoMAに飛んでみましょう。こちらもニューヨークにあります。私のもう1つのお気に入りの『星月夜』です。どれほど細かく見られるかご覧いただきましたが、筆遣いはどうでしょう? ゴッホはこの傑作をどう描いたのか見られたら素敵ですよね? どんどんズームしていきます。この絵で好きな部分です。ヒビ割れまで細かく見ることができます。これが『星月夜』です。こんな風にご覧になったことは、きっとないでしょう。

もう1つだけ好きな機能をお見せします。他にもたくさんあるんですが、時間がないので。すごくいかしています。コレクションといって、誰であろうと、お金持ちだろうと、貧乏人だろうと、豪華な家を持っていようといまいと、関係ありません。自分の美術館をネット上に作れるのです。このような画像を集めて自分のコレクションを作れます。「ズームの力」というコレクションを作ってみました。ナショナルギャラリーにあるホルバインの『大使たち』にぐっとズームして 、それにコメントを付けて友達に送ったりできます。このような名作を見て、どう感じたか意見を交わすことができるのです。

まとめになりますが、重要なのは、この素晴らしいものをもたらしたのはGoogleではないということです。美術館でもありません。そう言うべきではないのかもしれませんけど。本当の価値の源は画家たちにあります。それがこれを通して学んだささやかな認識です。このデジタルメディアによって、画家たちの作品が正当に扱われ、ネット上で適切な表現が与えられることを願っています。私は最近よく聞かれます。「美術館に行く体験自体を複製しようとしたのか?」 答えはノーです。これは実際の体験を補うものです。以上です。ありがとうございました。(拍手)

 

[これはTED公式日本語訳です。翻訳をレビューしていただいたTakahiro Shimpo氏に感謝します。]


付録

Googleアートプロジェクトで見られる有名な作品の例

Googleアートプロジェクト ビジターガイド

Googleアートプロジェクトの舞台裏

telegraph.co.ukによるインタビュー

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オリジナル: Amit Sood: Building a museum of museums on the web